« 漏水ぢごく | トップページ | EmulatorX/ProteusXシリーズ用ライブラリ »

2008年4月 6日 (日)

久しぶりに「羊のうた」

先月原画展に行ってからなんだか読みたくなっていた「羊のうた」(冬目景)を先日まとめ買いし、一気読みしてしまいました。
ちなみに1~6は古本で買いました。実家にあるものをあわせるともう3セットか4セット目だから許してくださいw

最後のほうはどうしても涙腺が緩んでしまいます。
発表当時賛否両論だった(ネット上では否定的な意見が多いが、自分は昔から賛のほう)最終回も実は序盤から丁寧に伏線を積み重ねて※あるようで、作者がインタビュー等で語っているようにある程度予定通りの進行であったことが伺われます。

6巻あたりはちょっと中だるみしていて残念ですが、この漫画は何回読んでも本当にいいですね。

※ネタバレなので"続きを読む"にて。古い漫画だからいいような気もするけど。

(ネタバレ)

最後の記憶喪失が「ご都合主義」とか「不自然」という意見が昔から多く、実際そのような印象を受けてしまうことは仕方がないと思います。
ただ、お話の構成としては、あの結末は途中からでも読めるようになっています。

高城家の病気を一砂がどのように発病していったのか・・・・

・八重樫さんへの淡い恋心があった
・高城家で暮らした古い記憶を、夢を通じて徐々に取り戻していった

幼いころから発病していた千砂ですが、その病状が悪化していったのは・・・・

・父親を(ゆがんだ形で)愛していた
・薬によって発作を抑えていたが、それによって体調そのものは悪化の一途をたどった
・体調の悪化とともに、父母に関する古い記憶を思い出していった

※千砂の場合は、体調の悪化につれて(=ストーリーの進行につれて)悪夢の描写が増え、夢の内容も核心に迫るものになっていきました。(夢以外のきっかけもありましたけど)
そして核心に近づけば近づくほど精神的に追い詰められ、体も蝕まれていくという悪循環に陥りました。

というわけで、「記憶を取り戻していったこと」が重要な鍵になっている、という想像が出来ます。
最終回で水無瀬が言っていたように、「高城の病気は精神的なものだから」思い出さなければ発病しない(かもしれない)、というのは、序盤から逆の形で描写され続けていたのです。
淡い恋心、とゆがんだ愛情、は一砂にとっては病気のきっかけと読むこともできますが、これらは対比のための要素なんでしょうね。二つの感情が、千砂と一砂の間で姉弟という枷を超えた愛情へと収斂していく過程も物語の大切な要素なのでしょう。

もう一点は、一巻の有名な美術室の場面。
真っ赤に染まってしまったカンバスが「もう元に戻らないよ」という八重樫。
元に戻らない、そして「張り替えなきゃ」という台詞は最終回で一砂の千砂との記憶(真っ赤に染まったカンバス)が失われ、再会前の状態(新しいカンバス)になってしまった、ということの暗喩だったように思います。

また一砂が生き残ってしまうことについても、序盤から中盤にかけて重要な伏線があります

・千砂は、発作を抑える薬(強い抗精神薬)を一砂に与えた
・一砂はその薬を飲んだが、彼には効かなかった
・水無瀬は、この抗精神薬は「体質によっては効果をなさない」と言っていた
・水無瀬はまた、この薬を「一度に大量に飲めば命を落とす」と言っていた

もちろん、毒薬と千砂が常用していた抗精神薬はまったく違うものでしょう。
しかし「薬が効かなかった」ということ、「命を落とす場合がある」(毒薬になりうる)という二つの要素を示すことによって、「一砂には薬が効かない」という暗示の効果があげられています。
二種類の薬、という点がミスリードを誘うトリックである、という言い方をしたほうが適切かも。)

こういう、明示されていない要素を読んでいくのって面白いですよね。人によっていろんな解釈が出来ますし、想像がはたらきすぎて妄想になるのもまた一興です(^^;

最終回は「千砂を愛した一砂」を千砂が連れて行ったのだ、という伏線とかそういうのがない解釈をするのも一層よいと思います。
やはりあれ以上の最終回はなかなかないのではないでしょうか。

で、まあ、僕としては「千砂は美しいなあ」というようなことばかり考えて読むのでした。
(駄目人間的オチ)

|

« 漏水ぢごく | トップページ | EmulatorX/ProteusXシリーズ用ライブラリ »

「アニメ・コミック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/159736/40790388

この記事へのトラックバック一覧です: 久しぶりに「羊のうた」:

« 漏水ぢごく | トップページ | EmulatorX/ProteusXシリーズ用ライブラリ »